STRRAY RIFT

映画・本・アニメ

劇場版「クラッシャージョウ」を見る

BS12にて放映された表題作を見た。

f:id:yuishika:20220217232847p:plain

1983年の作品なので実に38年前ということになる。映画館に見に行ったという記憶はすっぽりとないのだが、ビデオで見たような気もしないので封切り後、映画館で見たのだろう。wikiを見るとその後、2作OVA化されていたらしいが、こちらは全く知らなかった(1989年、「クラッシャージョウ 氷結監獄の罠」「クラッシャージョウ 最終兵器アッシュ」)。

f:id:yuishika:20220217232703p:plain

今回見たのは第1作にあたり安彦良和初監督作品。シーンのところどころは覚えがあったので見たことは確かだ。正直あまりおもしろい作品ではなかった覚えがある。今回視聴後も残念ながらその印象は変わらなかった。

今回目を見張ったのは安彦良和による全編にわたって丁寧な作画、特にキャラクター作画が施されていたことだ。安彦作画の作品は少なくはないが、それでもここまで全編に渡って見ることができる作品は多くはないと思う。なんとも贅沢だ。キャラの表情、動き、表情。最近では「機動戦士ガンダムORIGIN」でも安彦絵が動くのは見ることができるが、本作は本人が作画を行っているだけにことさら丁寧に動かしている印象を受けた。

絵以外、ストーリー、演出、音楽、声優といった要素は残念なレベルだ。

クラッシャージョウの原作小説はちょうど小学生の頃に熱心に読んでいた記憶があり、一時はまっていたのだが、本作映画で久しぶりに触れてみると、ジョウの行動があまりにも無鉄砲で思慮深さに欠け、運任せで雑に見えた。いくらクラッシャーだからといって行きあたりばったりで事をすすめても任務の達成は難しいのではないだろうか。
惑星ラゴール降下時、大気圏内での空中戦、終盤のラゴール軌道上での宇宙戦闘。いずれも数に優れた敵の群れの中に、なんの策もないまま突入する。人質がいるにも関わらず、マーフィーパイレーツの島に爆撃を行うなど、なんとも粗雑に見えた。

演出面でも冒頭のディスコシーンや、ラストのドライブシーンなどいかにも80年代っぽくまた冗長であった。

 

アルフィンは元王女様という出自なのだがこれもまた蓮っ葉な行動が目立って魅力をそいだ。ただたまに見せる姿は凛としていて安彦絵のきれいな作画もあってよかった。ただ声優はダメだ、佐々木るんのキンキンとした声は蓮っ葉感を増長させて全く受け付けなかった。もしリメイクされるとしたら、声優の方向性は全く変えてほしい。

佐々木るん聖戦士ダンバインで、身を呈して人々を守る王女エレ・ハンムを凛として演じていただけにこのアルフィンの演出はどうにもなじめなかった。

リッキーの声は小原乃梨子。これもキャラ演出がダメダメでプロフェッショナルなチームメンバーにはとても見えない。どちらかというとコンバトラーVなどの巨大ロボットもののチームメンバーの中でのマスコット的キャラに似た扱いを受けており、このあたりもなんとも古臭い。

要はキャラクターのストーリーの中での動かし方がなんともダメだったということだ。文句を言い始めるとキリがなくなるのでこのあたりにしておくが、連合宇宙軍のコワルスキー大佐の声が納谷悟朗、ジョウの父クラッシャーダンの声が久米明と声優はすごかった。コワルスキー大佐のキャラもコミカルな方向にされていたり、久米明の声は聞きづらかったりとこのあたりも残念。

劇伴の作曲は前田憲男だったが、これもなんの印象も残らなかった。エンディングの主題歌はほぼ記憶に残らないレベルだ。

全編に渡って残念感が漂う作品だが、それを打ち負かすほどに安彦作画はよかったのだが、おそらく次回見ることはないだろうな、ということで30点。